モロッコ編

2005.01.01

その昔傘は“権力の象徴”、今は“実用的ツール”


モロッコと言って多くの人が連想するのはやはり “カサブランカ”だろう。イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガードが共演した不朽の名作の舞台だ。だが、それ以外となると、アフリカ最西端に位置することくらいは思い出しても、日本と緯度がほとんど同じであることを知っている人は少ないだろう。ましてや、傘事情などは未知の領域に違いない。

しかし、実はモロッコと傘は深い関係で結ばれており、知っておいて損はない。アフリカでは傘は紀元前にエジプトから地中海や紅海の沿岸にそって北部を中心に伝播し、モロッコはその流れに逆らわずに率先して取り入れた。とはいえ、長い間、使用できるのは君主やその親族などごく一部に限られていた。傘を「選ばれしもののみが使えるもの」と位置づけることで、自分たちの絶対的な権力を誇示していたのだ。
「今でもモロッコ国王の即位式や宗教的儀式といった重要な場面で、国王の上に傘を差しかける風習はあります」とモロッコ大使館のスタッフは語る。ただ、現在では権力を示すというよりは、強烈な日差しを遮るための“実用的”な意味合いが強いという。また、一般庶民も今ではもちろん使用可能。夏場は40度越えるという内陸部の都市マラケシュでは、涼を求めて色とりどりの傘を差す姿がもはや定番だ。しかも男女共に差す。もし、昔のモロッコ人がこの光景を見たら、王族だらけになった祖国に腰を抜かすことだろう。

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