世界の傘事情 ベトナム編

バイク天国のホーチミンはレインウェアが百花繚乱
近年、ベトナムは生産拠点としてだけでなく、消費地としても注目が集まる。1人当たりGDP(所得水準)は3000ドルを超すと家電製品など耐久消費財の売行きが加速するとされるが、ホーチミン市は2013年に4000ドルを突破し、今後ますます伸びそうだ。期待感から2011年以降に米国系飲食チェーンや日系コンビニが続々と進出し、2014年1月にはホーチミン市郊外にイオンモール1号店、11月には2号店が開業。2015年までに3号店の設立を計画し、同年には髙島屋も開店する予定だ。
では、内需の拡大が見込めるベトナムの傘事情はどうか。ベトナムは11~4月が乾季、5~10月が雨季であり、雨季はスコールが頻繁に降り、東京よりも降水量は多くなる。「けれども、傘を差す習慣はない。雨宿りしてやり過ごせばすぐにやむし、そもそも歩いて移動することがあまりないから」と、ベトナム情報センターのスタッフは話す。
実は主な移動手段はスクーターなどオートバイだ。雨が降れば皆一様にレインコートやポンチョをかぶって疾走する。そのため、雨降りすさぶホーチミンは多彩なレインウェアで埋め尽くされる。
街中にはレインウェア専門店もあり、ベトナム情報誌「ベトナムスケッチ」によると、約4000種類のレインウェアを扱う店もあるそうだ。ポンチョ型が多く、最近は素早く着用できる前空きファスナー・ボタンタイプや雨中でも視認性が高いカラフルな柄物が人気。ポリ塩化ビニルなど耐久性の高い素材が売れ筋という。バイクに乗る際に親が子どもと一緒に被れる親子用タイプや、カップルや夫婦で2人乗りするときに便利な2人用レインウェアなど種類も様々。日本円で400~600円が相場のようだ。
ベトナムは晴れの日の日差しも厳しい。現地の女性の間では「肌が白いことが美人の条件」とされ、日焼けを嫌う。つばの広い帽子をかぶり、サングラスをかけ、目の下からあごまでカバーできるマスクと手袋を着用するのが、定番の対策だ。
競合が多く、単価がまだ安いという課題はあるが、今後所得の向上が見込めるベトナムで機能性が高い日本製のレインウェアが参入する余地はあるかもしれない。2020年には地下鉄の開通が計画されており、公共交通+徒歩による移動が浸透すれば、雨傘、日傘の利用も広がるのではないか。特に日焼けに敏感な女性の日傘需要は期待できそうだ。